HOME > イベント情報 > 山海塾「降りくるもののなかで―とばり」演出・振付・デザイン:天児牛大インタビュー
山海塾「降りくるもののなかで―とばり」演出・振付・デザイン:天児牛大インタビュー

世界40ヵ国以上で活動し、その洗練された肉体と造形の美しさで観客を魅了し続ける舞踏カンパニー・山海塾。劇場では開館初年度より山海塾の上演を毎年度行なってまいりました。今年は2008年に北九州芸術劇場にて日本初演を行ない、「降りくるもののなかで−とばり」を再演いたします。
先日、公演に先立ち山海塾主宰・天児牛大さんをお招きして記者会見を実施しました。本作のテーマや作品創作における起点など、お話いただいた内容をご紹介いたします。

「星」をテーマにした本作

「とばり」は2008年5月にパリで世界初演、同年9月に北九州で日本初演を行ないました。その後、ヨーロッパやアジア、アメリカなど12ヵ国で上演を重ねています。2017年で初演から9年になる作品ですが、北九州公演の後も、秋には南米での公演を予定しています。

 

本作のテーマは「星」あるいは「星座」です。いま見上げている星の輝きは実際には悠久の時間をかけてこちらに届いています。悠久の時間そのものは想像も出来ませんが、目に見えている星の輝きを“今”と我々は認識しているわけです。その時間の誤差の中に我々は立っているのではないかという意味で、「降りくるもののなかで−とばり」というタイトルにしました。過去のひとつの時間に包まれている現在、そういったこともこの作品の一つの大きなテーマになっています。

 

山海塾「降りくるもののなかで―とばり」演出・振付・デザイン:天児牛大インタビュー

 

「星」についてはずっとテーマとしたいという気持ちがあり15年程前から自分のノートには書き留めていました。北米やアメリカ・南米などツアーで各国を回るなかで、舞台が終わった後、ふっと外を見ると星が出ているわけです。南米の場合だと南半球ですから見える星も違ったり、水平線から星があがるのが見えたりもしました。そういう風景を見ると感動しますし、記憶として張りつきます。それが堆積していって、というところです。ただなかなか触れることができず時間が経ち、自分の中でこの作品になら取り入れていけると思い、2008年に初演となりました。

 

初演を踏襲し続ける舞台構成

初演時からの作品の変化はありません。作品そのものは初演までに細かい部分まで創作を行いますし、山海塾の場合、即興性は舞台には持ち込みません。変わってしまうことは私にとってはあまりいいことだとは思っていないんです。この作品もヨーロッパやアメリカなどを巡っていますが、各地で要求される作品というのは、その人が視認したものや、ディレクターが実際に経験体験したものをオーダーされるわけですから、大きく変容していてはならないと考えています。

 

初演から年月が経過し、世の中の変化というものも感じています。近年は、混迷の時代と言われたり、読み取りにくい世界に入っているとも思います。ただ、山海塾では、世の中で起きている事象を直接作品に取り入れるのではなく、根幹にあるものごとの破壊や生成を、原則的に取り入れていますので、事象に左右されることなく公演を続けています。今後も人の持つ良い感情や悪い感情など、そういった物のありかたなどを持ち込みたいと思っています。

 

多少メンバーの入れ替わりはありますが、振付についても基本的に踏襲していきます。変化があるとすれば、袖幕との距離や舞台の奥行きなど、空間の広さが異なるくらいです。その時の空間に対する踊り手の立ち方の適応はあれど、内容的には、劇場が大きくてもぎりぎりでも変えることはありません。ですので、今回の作品も年月が経って特に変えたということはありませんし、今後変わることもありません。他の作品も同じように考えています。

 

星々の瞬きを映し出す舞台

舞台は、最初とてもシンプルに見えるでしょう。床面に黒い楕円形の舞台があり、その周辺に砂が敷かれているだけです。その楕円形の舞台には、夏の日本の上空にある星座を象ってLED2,200個が埋め込まれています。
バックドロップ(背後の黒幕)には6,600個の大きさの異なった穴が開けられており、後ろから光を当てると、星座が浮かび上がるようになっています。なかなか星座そのものを見つけるのは難しいと思いますが、適当に作ったものではなく、夏の北極星を中心にした星座を象って穴を開けてます。

 

(C)Sankai Juku

 

山海塾では、極力我々がやれるものは我々の手で創りますので、床面のLEDもバックドロップの穴も制作したのは踊り手です。踊り手は単に踊りを踊るだけでなく、舞台を創りあげるその過程からすでに創作が始まっているんです。トータルに舞台全体を知ること。照明も自分たちが舞台に立ち把握すること。舞台を作ることで舞台上のどこに何があるかを知り、舞台の大きさ、空間関係についても把握していくこと。それが我々の原型にもなっています。また、個人活動はある程度自由ですので、舞台美術を含めて並行的に関わっていくことが、個々人が活動する場合にもプラスになると思います。これは、山海塾を始めた時から常に続けていることです。

 

常に基本を意識して行なう作品創作

作品を創作する際に意識しているのは、細部、いわゆるディテールです。大雑把なデザインから入るよりも、細かい部分から入り、積み上げて行くような流れです。なおかつ、基本に戻るということ。それを常に自分の中では意識しています。全然異なったことをやろうとか、違ったバリエーションでトライしようということはあまり考えていません。

 

基本ということで自分の中にあるのは、水平と垂直の関係です。水平というのは、我々の日常のなかで寝るという状態のことです。これは重力に対して一番素直で、リラックスしている状態です。そこから起き上がって活動生活が始まります。それが垂直の状態です。足の裏が地面に接し、手や上体の自由を得て活動に入ります。身体が一番地面に大きく触れている状態が寝ている状態。そこから立ち上がるという行き来をしているわけです。水平の状態・リラクゼーションと、垂直の状態・テンション、この双方の行き来というものを常に基本に考えています。

 

別の言い方でいいますと、自動と他動の関係とも言えます。自動というのは自分の意思によって動くことです。自動車を運転するといいますが、これは意思によって運転するわけです。他動の場合は意識を抜いた状態と私は考えています。例えば倒れ込んでしまう状態です。これは地面に対して一番リラックスした状態に身体を持って行かれるということです。力を抜いた他動の状態・リラクゼーションをベースに、自分の意思で動く自動の状態・テンションを考えて行く。それが他の舞踊との異なりだと思っています。基本的に舞踊というのは鏡を見ながらテンションを次々繰り広げていきますが、うちの場合は鏡を見て稽古をすることもありません。動きと言うものはほぼテンションで出来上がっていますが、そのベースにリラクゼーションというものがある。その力を抜いた状態を、舞踊の中に取り込みたい、と考えています。振付をする場合も、ディテールについてもリラクゼーションとテンションの行き来を一番ベースにしています。

 

(C)Sankai Juku

 

北九州での公演に向けて皆さまへのメッセージ

今まで毎年公演をさせていただいて、山海塾にとっても日本で一番馴染みのある劇場です。踊り手も近辺に馴染みの店などもできているようで、楽しみにしています。舞台を中心として、小倉とのよいお付き合いが出来ていると大変嬉しく感じています。

 

今回の「とばり」は、一つの物語というよりも、詩的な断片を7つの場面で繋いでいると理解してください。個々の方によって舞台を観て受ける印象は異なるかもしれませんが、それぞれの方の置かれている状況や状態で観て、その中で汲み取れるものを作品から汲み取っていただく。それが舞台との出逢いだと考えています。日常というバックグラウンドを大事にして、舞台と対話をしていただくきっかけになればと思います。

 

(C)Sankai Juku

 

 

山海塾「降りくるもののなかで―とばり」公演情報はこちら

2017年3月19日(日)14:00開演

 

このページのトップへ